ECパッケージにするか?カートASPにするか?後悔しない選択のポイントまとめ

2022.11.04

自社でのECサイト構築時にどのECプラットフォームを選んで行うのかはとても悩ましいポイントです。それぞれのプラットフォームごとに一長一短があり、導入したECプラットフォームによってその後の運営の難易度や売上に影響する可能性もあります。

なかでも難しいのは、フルスクラッチほどではないけれどそれなりの希望や要件が膨らんでいる時です。カートASPでの構築にするのか、ECパッケージにするのかの判断が難しい状況にいるような場合です。それぞれにメリットとデメリットがありそれが事業者ごとにも違うといったことも少なくありません。この場面での選択一つでその後の運用の経過や展望が変わってしまうと思うとどうしても慎重になってしまいます。

この記事では、少しでもそうした悩みを読んでくれた人が解決できればと、ここではECパッケージと、カートASPの中でもハイスペックなものを中心に比較して解説してみました。

ASPとECパッケージの特徴をおさらい

まずはカートASPとECパッケージの特徴についてそれぞれ考えてみましょう。

テナント入居型のECがカートASP

カートASPの特徴を箇条書きで並べてみましょう

  • 利用料は定額でオールインワン
  • ベンダーで許される範囲の拡張性
  • ベンダーが許容する範囲でのデザイン性
  • アップデート作業はベンダー対応にて不要
  • テンプレートを利用することによる簡易的な構築が可能

最大の特徴は利用料が定額で課金されることです。そしてベンダーが決めた範囲のことができるということでしょう。

それはちょうどテナントビルに入居してお店を作り、利用する感じに似ているかもしれません。

例えばビルの内装などは間取りに制限されながらも自由にできます。内装にはお金と時間が必要ですが、簡単に済ますこともできます。水道や電気などはある程度決められた箇所から使うことになり、決められた容量以上に使うことは難しい…などがテナントビルの特徴です。

ASPを使う場合、料金は一定です。そして制限があるという部分は時にメリットにもなります。

間取りが決められていることで、作業が効率化ができる部分があります。凝ったこともできますが、決められた範囲に限られます。また、難易度もやりたいことによっては二次関数的に高くなります。ASPではこれと同じようなことが起こります。

カートASPは今も発展の続いている分野です。例えばshopifyというカートASPがあります。Shopifyはプラグインを使って拡張する仕様になっており、どういったプラグインを入れるかでECプラットフォームとして可能なことの範囲がどんどん増えていきます。

かなりマーケティングツールを柔軟に取り入れることができるようになってきました。

プラグインの開発を手がける企業も多く、かなりのことが行えます。一方で、それらの多くは有料で、従量課金性になっていることが少なくありません。そのため、利用のランニングコストは跳ね上がっていく可能性もあります。

ある程度のランクのASPになると見た目上のデザインについては多くのことが自由に行えるケースが少なくありません。ただし、根本的なページ遷移であったりといった仕様に絡んでいくとなかなか難しい状況になっていきます。もっとも、できないことはできないというのがASPの特徴と考えると分かりやすいかもしれません。ルールの範囲を超えてくると突然難易度が上がってくるというのがASPでの構築の特徴です。

既存の工法でビルを立てるECパッケージ

一方、ECパッケージは、既存の工法を用いて建物からお店作りをする方法といえます。

自社ビルを立てる場合はインフラの設置場所などから決定することができ、その電力容量なども設計に組み込むことができます。ただし、設計の多くは既存のパーツを組み込んでいくことでコストを下げるという工法がECパッケージでのECプラットフォーム構築ということになります。

実際にこうした工法は建築では一般的です。これがECプラットフォームのケースでは設計者の意図を全面的に活かすことを考えるとフルスクラッチでの構築を考えていくということになります。

多くの場合、ECパッケージであれば要件を満たすことが可能です。

一方で、構築にはそれなりに高い専門技術が必要になってくる部分も出てきます。自由度が高くなるということはそれだけやらなければいけないことも増えてくるということに他なりません。

メリットとデメリットを比較

カートASPをテナント、ECパッケージを自社ビルに例えてみましたが、概念的な部分についてご理解いただけたのではないかと思います。それでは具体的にメリットとデメリットを二つですり合わせて解説していきます。

構築の自由度はECパッケージ

やはり、構築に関して要望をかなえやすいのはECパッケージにメリットがあります。この場合、見た目的なことだけでなく、様々な機能の追加、連携、カスタマイズにおいてはより顕著になります。ASPでも拡張が可能なAPIを提供するケースは増えてきました。しかし、始まりの土台がそもそも違うので、ASPで対応可能にしない限りは拡張性がない状況とは違います。

ASPはこのカテゴリでは「クラウドEC」という概念でECパッケージに迫る勢いを見せています。しかし、これもやはりベンダー側で設定された範囲のものであるという点については同じ状況になっています。そうした意味で比較するとECパッケージにとっての柔軟な構築可能性は大きな強みです。

構築のしやすさ、初期費用の軽さはASP

どちらが容易にサイトの構築を完了できるかという点でいうとカートASPに軍配があがります。カートASPには必要なものがすぐに使える仕組みが出来上がっています。設定の多い少ないの差はありますが、カートASPのある種コンパクトな足回りの良さは構築時に大きな助けになります。

カートASPの簡便性はもちろん、これは自由度と相殺されている部分ではありますが、もし基礎的な部分で要望と一致度の高いカートASPが見つかれば、ECパッケージの出番はおそらくないでしょう。

もちろんこれは自由度の高さを引き換えにした結果ともいえます。ECパッケージでは、その柔軟性がゆえに構築への知識的な要求度も高くなるため、「とりあえずECをはじめよう!」というようなカジュアルなユーザーには向かない構築方法です。

機能自体はもちろんECパッケージも持っています。むしろカートASPよりも豊富にあるケースのほうが多いでしょう。しかし、設計して組み立てなければうまく使えるECサイトにはならないでしょう。

また、このことはもう一つは初期費用に関することにも影響してきます。どうしても初期の構築の費用で比較するとECパッケージのほうが金額が増えていきます。そのためある程度プロジェクトに予算が必要になってきます。

また、初期費用ということでいうならば、ECパッケージの場合はライセンス使用料として最初にそれなりの金額が発生します。金額としては大まかな販売価格が数十万から数百万円となり、それが初期費用に乗っかってきます。一方で月額定額となるカートASPは初期費用がぐっと抑えられることになります。

ただし、こうした使用料に関しては期間を見越してトータルした金額を考えてみる必要もあります。例えば月40000円のASPに1年間に支払う金額は480000円になります。こうして考えてみると初期費用の高低だけで考えるのは非常にナンセンスといえるでしょう。

メンテナンス性はカートASPが優れる

カートASPとECパッケージでメンテナンスに関する労力を比較すると、圧倒的にカートASPに軍配が上がります。

アップデートなどの作業に関して、利用者はやることはほぼないと言っていいでしょう。そのため、できることといえばセキュリティに関して行うこともパスワードの管理程度しかありません。二重認証などベンダーが提供するシステムに乗っかっていくことが主な対応になります。

一方でECパッケージの場合はアップデートの作業をそれぞれのサイトで個別に行なっていく必要があります。これはECパッケージの使用上、販売者側で自動対応することができないからです。

ECパッケージは利用者がそれぞれでサーバーを用意して、そこにプログラム、つまりECパッケージをアップロードする仕組みになっています。サーバーの管理から利用者は行います。基本的にプログラムを利用するライセンスを得るだけで、その後、何らかのトラブルがあった場合も、その責任は利用者が追うことになります。

ただし、ユーザーに向けた安全対策を深めるという点ではECパッケージのほうが優れている可能性があります。現在は様々なセキュリティ対策が次々に開発されている状況になっています。

買い物をする立場としては面倒でも安全なサイトで購入したいと考えるケースが増えています。そうした場合にはより柔軟な対応ができるECパッケージのほうが優れている可能性があります。

そのため、根本的なサービスのあり方が違うため、比較しようもないといえます。メンテナンス性という意味では、もしベンダー側でトラブルがあり、解決できない場合はASP利用者の手も足もでない感じはなんともいえないことになるでしょう。

今までASPでおおきなトラブルを抱えているという例はあまり聞きませんが、万が一トラブルが起こった場合も、利用者は何もできないということも覚えておく必要があります。

比較したものを並べてみましょう

カートASP VS ECパッケージではおおまかに以下のように比較できます。

カートASP<構築の自由度<ECパッケージ
カートASP<拡張性<ECパッケージ
カートASP<初期コスト<ECパッケージ
カート<メンテナンス性<ECパッケージ

このようにざっと比較することができます。

注意しなければいけないのは、こうしたことは「利益率がよい」「ランニングコストが良い」「販売力に差がある」といったことを直接的に決定する項目ではないということにあります。

絶対にもうかるECプラットフォームがあれば、誰もが疑問なくそのプラットフォームを使うはずです。しかし、実際には、どのスタイルのECプラットフォームも含めて乱立しているということが物語っていると言っていいでしょう。

まとめー決定する要素は自己分析にあり

結局、ECプラットフォームを決定するということにとって必要な要素は「まず自己分析にある」ということがいえると思います。

  • 何をどう売るのか
  • どういった手段を用いるのか
  • 誰に対して売るのか
  • どんな展望をもっているのか
  • 構築に関する予算はどれくらいあるのか
  • どうやって運営していくのか
  • 商品の利益率

など、いろんなことをまず自己分析してみる必要があります。その上で、2年程度は長期的なヴィジョンを考えてみる必要があるでしょう。単純にそれぞれのメリットやデメリットへの視点が変わってくるはずです。たとえば自由度に関して、長期的に我慢できる内容なのであればカートASPでも問題ないはずです。

一方で初期費用に関しても長期的な視野で考えた場合、ECパッケージのライセンス取得費用は問題にならない可能性も十分にでてくるからです。

また、サポート体制については一般的にはカートASPのほうが優れているという印象が広がっています。しかし、一括りにすることはあまり良くありません。やはり、どちらのECプラットフォームであってもそれぞれの事業者の考え方やスタイルによってサポートやサービスの状況が変わってくるからです。

どういったケースであってもまずは自己分析によって、何が譲れないのか、何を切ってもいいのかを考えることを短期的にではなく、ある程度長期的に考えてみることで納得のいく選択ができるようになるでしょう。

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この記事を書いた人

鈴木りゅうた 株式会社

1975年生まれ。会社員から2004年よりライターとして活動。雑誌を中心にネット移行への過渡期を経験。主に音楽、文化、医療、マーケティングなどについて執筆。ライター外ではマーケティング、コーチング等。

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