ECプラットフォームを本当にプラットフォーム化してメリットを大きくしよう
2022.10.31
どんなことでもメリットを大きくすることが成功の秘訣です。それはECプラットフォームも同様です。ECプラットフォームという言葉はECサイトとほぼ同意義語として使われていますが、ここでは本来のプラットフォームという語源に戻って考え、人が集う場所として作り出していくことで、この2020年代のECをより豊かにする秘密がある、ということを説明していきます。
CONTENS
人が使う場だからこそ、ECはプラットフォームであるべき
ECプラットフォームとは、ECとして活用できる場という意味です。今や、ほぼECサイトと同じ意味で使われています。その意味は広く捉えたれており、ECモールもフルスクラッチによる自社サイトも同義で「ECプラットフォーム」と一括りです。
ECに関わる立場でいうと、この「ECプラットフォーム」はただECが使える場所という意味を超えて、ECを通して人々が交差するプラットフォームとしてあって欲しいと思っています。また、そうなることが結果的にECを伸ばし、社会への影響力も大きくなるのではないでしょうか。
プラットフォームとは元もの意味は「平になった少し高い場所」という意味です。その後、環境、基礎という意味で使われるようになりました。そして、現在ではビジネス用語、またソフトウエアに関わる専門用語としては「動作環境」という意味で使われています。
ECプラットフォームという場合、「ECの動作環境」という意味で使われ始め、今はもう少し広い意味で使われるようになってきています。たとえばモールの場合は動作環境と言われてもピンとこないかもしれません。
さて、本来の意味でも普及している意味でもECプラットフォームには機能がとても重要です。そして、その機能をどう生かし、どういったECの場所にしていくのかということも同じように重要です。素晴らしい機能を搭載したECプラットフォームもそこに人に対する配慮がなければ、買い物客にとってどこか違和感がある、販売も何かしっくりこない、運営もしづらいという状況ではECプラットフォームとしては失敗しています。
1度目は良くても2回目にその場所で買い物をすることは躊躇してしまうかもしれません。販売機会をうまくつかめないので、ECでの販売意欲は減衰するかもしれません。運営しにくいので、離職率があがるかもしれません。
テクノロジーこそ人への洞察あってこそ
購入客、販売者、運営者、それぞれのが関わる場所という視点をもって、利用するプラットフォーム選びを行えばそうした状況を回避することができます。
そうした関わる場を補強し、快適にするためにテクノロジーを投入するということが重要です。
機能としてのトップテクノロジーとしてはMAという存在があります。マーケティングオートメーション(Marketing Automation)の略語です。これは文字通り、マーケティングに関わる作業を自動化していくツールです。
ここまでの話について「MAを使ったら人は不在じゃないか」という意見があるかもしれません。しかし、こうしたツールこそ、人間の存在をしっかりと意識しなければ役に立たないものです。
自動化したことは「多くの人にとって有用である」必要があります。つまり、そこに対して人にたいする想いがなければ成立せず、ただノイズをつくるだけになってしまいます。おざなりな導入はまさにただハイテクノロジーなだけになることは明白です。
データの分析も同じようなことがいえます。ただの数字の羅列として捉えていては先に進んでいくことは困難です。そのデータが出たことについて、その裏に人々のどんな想いが隠されているのか、どんな感情がその行動に結びついているのかをしっかりと洞察しなければいけません。
こうして考えるとマーケティング機能や運営補助の機能についても同様のことが言えます。ただ搭載するだけでは、使えない機能を搭載したにすぎない可能性があります。
ECは人が使うためのものです。ですので、あくまでもそこに関わる人のことをしっかりと考えた、まさに言葉通りのECプラットフォームでなければなりません。
ECだからこそのメリットをいかせているか
ECプラットフォームとしてしっかり機能するためには人に注目することが重要という話の前に、ECであることのメリットを考えておく必要もあります。
ECが普及してきたことで、メリットをそこまで深く考えなくなっているかもしれません。しかし、どんなことでも、基本的にメリットを生かし、デメリットを隠していくということが、よい結果を生み出すことに近づくことはいうまでもありません。
ECのメリットを挙げてみましょう。この場合のメリットはそれぞれの立場を複合的に考えたものです。ですので、ECに関わる立場によってはデメリットになることもあります。
- 距離にかかわらず、売買できる
- 営業時間を気にせず販売、購入できる
- 価格など数値情報の比較をしやすい
購入者にとって、距離と時間を超えることができるということは非常に画期的でした。世界中の商品を購入することができます。また、世界中に向けて販売することもできます。今、世の中は多様で、いろんな人が様々なシチュエーションで暮らしているということに皆が気づいています。
距離と時間の差をなくすということは、そうした様々な立場で暮らす人々の生活を均等に支えることができる仕組みということです。そうした点でECはとても優れていると言えます。
一方で情報の比較をしやすいという点では販売者側にとってかならずしもメリットとはなりません。特に価格を比較されてしまうということはとても難しい問題を孕んでいます。一方で、しっかりと「そこで販売できない商品」を作っている製造者がそのまま販売者になることで、これはメリットになることも十分にあります。
自分でしか作ることのできないもの、売ることのできないものに対して価値を置くことができるということでもあるからです。
デメリットはメリットの裏返し
ECでのデメリットも考えておく必要があります。これはメリットともつながるものです。
- 集客しないと誰もこない
- 商品を実際に手に取ること、見てもらうことは難しい
- 商品はすぐに手に入らない
- 比較対象がインターネット中にいる
- 既存のビジネス知識と同様にIT向けの知識が必要
「集客の課題」「商品を手に取れない」「すぐに手に入らない」というところは距離と時間にとらわれないというメリットの別の側面と言えます。
「遠い場所にあっても購入できる」「いつでも購入できる」ということは、決して実際に近くにあるわけではありません。あくまで物理的な距離と時間をすべて克服しているわけではないのです。一つのものごとをクリアすると次の課題はより大きな問題になります。
集客の課題が生まれる要因は、ECサイトが生活の中で自然と目にするものではないということからきます。もし実際の店舗であれば、人通りがあれば誰かの目に必ず付きます。インターネットではそうはいきません。しかし、これは検索やSNSへのアプローチで解決することが可能です。
「商品を手に取れない」という課題にも取り組みが進んでいます。例えばおおくのアパレルECでは実際に商品が届いた後、返却しやすい仕組みを工夫しています。もし、実際に自分にあわなければ返却できることで手に取れないことで発生するリスクを回避しているのです。
「すぐに手に取れない」という点でも当日配送などを試みる事業者は少なくありません。これはまた配送業者への負担という別の課題も生んでいますが、課題解決に別の課題がつきまとうのは世の常とも言えます。
問題に対して、常に対応する姿勢がなければ進歩はありません。また逆にデメリットはメリットになってくる可能性もあるということもわかります。問題はその特徴をどう捉えて変換するかということが言えます。
基本的に行うべきはECのメリットを活かすことが重要です。プラットフォーム選びではそれぞれの商品がどの状況にあるのかで、その選択も影響を受けるべきです。どういったブランドにするのか、どういった商品をECで扱うのか、また、どういったホスピタリティをECで実現してみせるのかを考慮することは、直接対面で商品ともブランドとも接触をもたないECという形態での販売においてはとても重要な要素といえるでしょう。
ECのメリットを最大化するためには、この部分の検討を必ずしなければいけません。
ECでも本当の意味でのプラットフォームを目指す
さて、ECのメリット、デメリットを捉えた上で改めてECプラットフォームは文字通りのプラットフォームであるべきという問題について考えてみましょう。
集客という課題がECにあることは前項の通りです。人が集まるという意味での環境、基礎としてのプラットフォームで考えるとECはよりリアルで身近になるでしょう。
SEOや広告は集客の手段ですが。集客行為だけでは人を惹きつけておくことは困難です。ですので、検索の最適化や広告による流入を増やすことと同時に、検索した後、流入後の体験も最適化していくSXOを行っていくことやUXをよりインパクトがあって心地のよいものにしていくことが。今後のECではもっとも重要といえます。
つまり、サイトにたどり着いてからユーザーは何を得るのか、また、購入を通してどんな体験をするのか、また、していくのかを考えるのです。もちろん最初から興味のない人にとって、そのECサイトが集まる場になることは困難です。しかし、検索という作業の裏には「知りたい、興味がある、やってみたい」というアクティブな要素が背景にあることを意識しておくことが重要です。特にECサイトは購入しなくても「今後買ってみたい、いつかは欲しい」と思っておとづれている人もいることを忘れてはいけません。そうした人が、より商品のことや、その周辺にある利用方法や文化背景、歴史、ウンチクなどを知るだけで満足度は跳ね上がっていきます。
ですので、直接購入しなくても訪問する機会を作って親密になることはとても重要なのです。ECを通して、見えなくてもいいのでコミュニティが生まれたらそれは最強の集客プラットフォームになります。
販売する立場でも人に着目することはとても重要です。「商売」の面白さというものがあります。たくさんのビジネスの成功論がありますが、それは必ずしも正解ではなく、また不正解でもありません。しかし、自分の意図した方法で売れるということの楽しさは確実にあります。ECプラットフォームとしては売るという側面でも売り手としてどうありたいかを考えておくことがとても重要なことは確実でしょう。
運営者の快適さと評価されること
ECの運営担当者は、ECが文字通りのプラットフォーム、つまり駅とするなら、駅員さんであり、電車の運転手さんや車掌さんのようなものです。
こうした駅の運営に関わる人の仕事がしやすくなるほど、電車は快適になり、駅は利用しやすくなります。この例えるなら買い物をするユーザーは乗客、そして販売者は鉄道会社です。
運営者の快適な環境整備は販売力を強化し、ユーザーの利便性を向上させていくことになります。
また、もっともECプラットフォーム上で活動的な存在となるのは運営者です。人は正当に評価されることでよりモチベーションを上げていきます。しかし、どうしてもEC運営者の作業は見えにくく、企業内で評価されにくくなります。
その結果、離職率をあげてしまったり、疲弊してしまうことで、しっかりとノウハウが蓄積されないことにつながったりします。ECプラットフォームとしては、運営が快適であること、そして、アクションに対して、その実績がしっかりと見えることがとても重要です。
人が集うからECは強くなる
ECはWEBを通した世界にあります。そして、WEBを通して人が集まる場所でもあります。一般的に多くのECサイトはセッションとコンバージョンを追い求めることが表面的には重要です。”ものを売る”ということがECプラットフォームの意義だからそれは間違いではありません。
しかし、それを達成すること、そして、その売上を達成するのはなぜなのかという問いも忘れてはいけません。その数字の後ろに人の営みがあるということを感じなければ、その数字を持ち上げていくことはできないでしょう。
買う人だけではなく、売る人が売れる楽しみを、そのECプラットフォームを動かす人がやりがいを感じながらできる場所–ECプラットフォームがそういった人の集まる場所になることで、ただのオンラインショップでは終わらない、世の中に影響を与える場所になっていくことを目指すことが、ECプラットフォームは可能です。1990年代に登場し、2000年代には人々の生活をECは大きく飛躍させることに成功しました。
ECプラットフォームを通して、またさらなる新たな世界を目指していくことができると私たちは考えています。私たちがリリースした共創型ECプラットフォームtri-coを通して、また日々の業務を通して真剣に私たちはその明るい未来を目指しています。
ABOUT US
この記事を書いた人
鈴木隆太 株式会社かいな
1975年生まれ。会社員から2004年よりライターとして活動。雑誌を中心にネット移行への過渡期を経験。主に音楽、文化、医療、マーケティングなどについて執筆。ライター外ではマーケティング、コーチング等。