2020年代に生き残るためのECプラットフォームの選び方とは?
2022.10.07
ECプラットフォームの選択をする場面はいくつかあります。多くは新たにECサイトを持ちたい、インターネットに販売のチャネルを持ちたいという場面です。そしてもう一つはリニューアルを考える時。どちらも同じ作業ですが、選択肢は大幅に違います。また近年、少しづつECプラットフォームの細分化が始まっています。現状にあったプラットフォームを選ぶためにどんな種類のECプラットフォームがあるのかを知り、あっているプラットフォームを選ぶのがポイントです。
CONTENS
プラットフォームの種類によって変わるECの未来
どういったECプラットフォームでEC事業を展開するかで、その深度や広がりに違いがあります。
その選択はどういった商品をどのように売りたいのか、将来的な展望をどう考えるかで選択するかによって変わってきます。ネットショップをどの程度の規模感でやるのか、どういったプラットフォームを活用するかによって、できることの得意不得意に違いが出てきます。
ECプラットフォームの分類
まず選択するにはどういった種類のECプラットフォームがあるのか知る必要があります。販売者として活用できるECプラットフォームは大まかに分けると4種、それをさらに細かく分けると7種類に分かれます。4種の場合は「ECモール」「カートASP」「ECパッケージ」「フルスクラッチ」です。
これをもう少し細かく分けるとASPにはいくつか分類があり、用途の段階や規模感にあわせて選べるようになります。
- ECモール
- 簡易型カートASP
- 標準装備型カートASP
- クラウドEC
- オープンソース型ECパッケージ
- 標準型ECパッケージ
- フルスクラッチ
一応、手軽さや規模感、予算感などを加味して、上から順に並べてみました。ECモールとフルスクラッチではとてつもない開きがあります。また、できることも大きく違います。そのため、一口にECプラットフォームといっても全く違う部分が少なくありません。
それでもインターネットを活用して販売していくという点は基本的に同じものともいえます。ECパッケージという場合、販売するためのチャネルを構築することが可能で、販売のための決済機能を持っていてEC事業を継続的に運営していくことができるものを言います。
ではまずそれぞれのECプラットフォームの特徴をもう少し詳しくみてみましょう。
手軽なだけじゃないECモールの活用
21世紀に入ったころのWEBショッピングといえば巨大ECサイトの時代でした。Amazon、楽天は2000年代のWEBショッピングの普及に大きく貢献した存在です。
これらがECモールと呼ばれる存在です。他にもASKULやモノタロウなど商品の傾向にあわせたコンセプチャルなECモールも存在しています。ECモール自体の集客力を活用しながら販売することが可能です。基本的に同一のレイアウトを使い、モールの運営によっては利用できる画像のルールなどの見せ方の部分から、送料まで決まっています。そのため運営はそのルールを遵守する必要があります。
また、販売ごこに販売手数料をシステム利用料としてモールの運営は徴収します。そのため利益率の悪い商品の場合はそもそもモールに向かないケースも存在します。
もっとも大きなメリットは集客です。自社でのECサイトを使った場合に多くの出店者が苦戦するのは集客です。しかし、モール自体に集客力があるため、ニーズに合わせたカテゴリ設定をしっかりできれば一定の販売数を確保することは難しくありません。もちろん、市場全体のニーズをコントロールできるわけではないので必ず売れるというものではありませんので、そこは混同しないようにする必要がありますが、自社でサイトを構えるよりも大きなアドバンテージがあるのは確かです。
検索エンジンに対するサイトの検索最適化の作業、つまりSEOをする必要がありません。これは一つの負担から解放されます。独自のドメインでサイトを運営する場合、必ずSEOについて考えなければいけないことを考えるとこの違いは大きなものがあります。
それでも楽天市場などではサイト内検索の上位にどうやって表示させるのかといったサイト内SEOと呼ばれるものも出てきているという部分は存在します。
海外での販売を考える、いわゆる越境ECなどを考えている場合は、圧倒的に有利です。言葉と文化の違う海外で、サイトの集客をするにはそれなりの準備が必要です。プロモーションを展開していく場合、まずその国の事情なども把握した上での作業が必要です。そのため、自社サイトを立ち上げての展開は工数が跳ね上がることになります。
その点、現地で一般化しているモールへの出店であれば、集客の部分での課題をひとっ飛びで乗り越えて販売に向かうことができます。こうした点で越境ECについては大きなメリットがあります。
また、広告を予算として大量に組み込んでいる場合もメリットがあります。あえて広告で集客する必要がないケースは少なくありません。それでも、メーカーが出品しているという場合は商品の認知度のために必要になることもあるでしょう。
一方で、類似の商品と並列に展示されることになります。ブランディング は非常に行いにくく、ライバルが多い場合は埋没しやすくなります。そのため、価格競争の波に飲まれてしまうことも少なくありません。また、モール自体で炎上騒動などが発生すると、少なからず影響を受けることもあります。全体的には外部の環境に影響を受けやすくなると考えておくとよいかもしれません。
もちろん、一般化している商品の中で圧倒的なユニークさを持っている場合はモールでの販売でも成功できるケースはあります。
モールに向く条件としては
- 越境ECを考えている
- 一般化しておりもはやブランディング の必要がない商品を扱う
- 利益率を十分に確保できる
- 生産量、供給量が安定している。
などが考えられます。また、自社でのECサイトと併用して事業の初期段階に活用するといったケースも考えることができるのもモールの特徴といえます。自社ECサイトを前提にしたECプラットフォームでは、モールとの連携を考慮した機能を搭載するといったことも可能です。
運用での手間は増えますが、実際にいくつかのモールと自社ECサイトを併用して活用している企業も少なくありません。
副業に向く簡易型カートASP
最近は趣味で行っていることが興じて、専業従事者を超えるような高品質なものを作り出す人が増えてきました。それに伴って副業としてそうした制作物を販売したいという要望も高くなっています。そうしたニーズに応えるECプラットフォームが利用料金も安価で、簡単に構築もできるカートASPの存在です。簡易型カートASPやインスタントASP、無料カートASPなどと呼ばれます。
BASEやSTORESなどが有名で、この数年で多くのユーザーを獲得しました。そうした流れから、いくつかの利用コースを持つASPの中には無料のコースを設けてユーザーシェアの激しい奪い合いが始まっているカテゴリーです。たとえば老舗のカートASPであるカラーミーショップは昨年から無料コースを新設しています。
とにかく手軽にECサイトを解説して始められるため、スタートアップの資金的リスクを負う必要がないのがメリットです。一方でデメリットとしては機能制限が多く、販売数が増えてくると毎回のオーダーに対して手数料が発生してくるという課題があります。
また、少しだけ機能を足したいと考えた場合にできないケースがあったり、課金金額の分率があまり良くないため、結局高額の手数料を支払っているといったケースも稀にみられます。
簡単にポイントをまとめると以下のようになります。
- 初期コストと出品開始までの時間が圧倒的にかからない
- 販売手数料が発生するため、軌道に乗ると利益を圧迫する
- 機能制限があるため、作業に限界がある
もし順調にEC事業が伸びた場合、早期に利用の限界がやってくるのも特徴の一つかもしれません。
一番守備範囲が広い標準装備のASP
無料ではないASPがこのカテゴリに含まれるASPです。利用の月額は1000円程度から数万円と幅広く、また、利用できる機能も幅広くなります。
金額が上昇していくと少しづつ特色は見えにくくなり、どのASPも多機能になってきます。そのため、コースをいくつか設定しているASPでは高額なコースを比較するとどこにそのASPがフォーカスしているのかが少しわかるようになる部分もあります。
多くの場合、最初はこの¥3000~¥10000くらいの範囲でのASPを使うことが一般的です。ECプラットフォームを自社ECサイトとして所持して活用する事業者の多くはこの範囲のASPを使っています。また、ある程度の規模の企業でもカートASPを活用している企業は実際に少なくありません。
あくまで一般論ですが、大体10000円を超す月額利用料になると、ECに必要な機能の多くが揃います。また、視覚的な部分でのデザインについても許容量が大きくなるため、見た目上の不都合もあまりなくなっていきます。
一方で、構造的な改変はいまだに難しい部分も多く、あくまでASPのベンダー側で用意したものの範囲で行っていくということが大前提になります。そのため「自動化ツールを使いたい」「チャットを組み込みたい」「CRMをうまく連携させたい」といった機能の拡張性を考え始めると、あくまで利用可能な範囲で行う必要があります。つまり、ベンダーが対応する範囲に依存することになります。
このようなデメリットをカバーするために、クラウドECと呼ばれるスタイルのECプラットフォームも登場してきました。
売上に伸び悩む自社ECサイトの多くはこの範囲のECプラットフォームを活用しているケースが少なくありません。これは必ずしもこの範囲のカートASPに問題があるというわけではありません。それの意味するところはあくまで一般的な機能が一通り揃っており、通常の運営をするのに十分であることから、あくまで多くの利用者がそのラインに多く集まっているためです。
また、セキュリティアップデートなどのメンテナンスから解放されるため、ECパッケージなどを使わずにあえてカートASPでEC事業を展開している大手企業も存在するのも事実です。
- 一般的なオンラインショップの機能は揃う
- ベンダーの提供する範囲に可能なことは依存する
- 他システムとの連携などはベンダー対応範囲内で行う
- 月額の利用コストは一定に抑えることができる
- メンテナンスなどに対するリソースが必要ない
順番に上げていくと次はクラウドECということになりますが先にECパッケージについての説明をしなければなりません。なぜならクラウドECの背景にはECパッケージがあるからです。
目的をECパッケージが実現
ECパッケージはECに必要なプログラムをライセンスとして取得し、サーバーにインストールして使用するタイプのECプラットフォームです。カートASPと並んで一般的な自社ECサイトを持つ方法といえます。
プログラムを自分で用意したサーバーに格納して使用します。構築についてはカートASPと異なり、自在度が高く、かなり自由度の高いカスタマイズをユーザーが可能です。その分、専門性も構築する際には必要になります。
また、WEBの構築とともに、サーバーのメンテナンスもその形態上、自分で行う必要があります。そのため、WEBの構築だけでなく、ネットワークについての知識も要求されることになります。
つまりWEBについて全般的に専門的な知識が要求される構築方法です。しかし、自由度の高い構築は非常に魅力的です。外部のシステムと連携させて様々な施策を実施したり、ユーザー導線を最適化するといった作業は多くの場合カートASPより勝ります。
そのため、「ユーザビリティの高いサイトを作る」「マーケティング施策と連動性の高いEC」といった目的性を高く設定してECサイト構築に取り組む場合にはとても優れた構築方法になります。
金銭面ではカートASPのような月額でサービスを受け取るわけではなく、ライセンスを買い取る仕組みになっているため、利用のためのコストは初期に集中してきます。もちろんメンテナンスについては自己管理になります。そうした部分を考慮すると月額利用料が発生しないからといって簡単にASPより維持費が安いということにはなりません。アップデートなども考えると、利用の状況によってはランニングコストが高くなることも珍しくありません。
ECパッケージの初期費用
ECパッケージは初期費用の考え方も複雑です。それはオープンソースのECパッケージも存在するからです。オープンソースはECパッケージとしての浸透度も高いため、話はより複雑になってきます。オープンソースとはプログラムを公開し、集合知的に技術者が共同でプログラムを改良していく仕組みをもったプログラムです。利用することに対してももちろん料金が発生しません。
そのため大きく初期費用を抑えることができます。通常、ECパッケージのライセンスは有料のものでは数十万円から数百万円に設定されています。開発に費用が必要なのでこの金額は必ずしも高額ではなく、合理的な価格です。
しかし、そうしたプログラムが無料で使えるケースもある、つまりオープンソースも同じカテゴリに存在しているのです。
もっとも一般的に知られているECパッケージといえば、日本ではEC CUBEです。そして、これはオープンソースのECパッケージでもあるのです。
オープンソースを利用するメリットとしては初期費用の圧縮につきます。ライセンス取得料はASPと比較しても割高と感じるでしょう。それを一足飛びにパスして、豊富な機能を手にすることができるのは単純にすごいことではあります。また、開発速度も多くの技術者が有志で集まるため、最新の機能搭載が早いのも特徴です。
しかし、一方でオフィシャルなサポートは一切ありません。使用は完全に自己責任となります。セキュリティについては常に不安が付き纏います。オープンソースであるということはプログラムが公開されているということでもあります。
プログラムが公開されているということは悪意のある技術者が入り込む余地を作っているということでもあります。つまりオープンソースであるということが弱点になることもあるということになります。
伸びつつあるクラウドECという選択肢
クラウドECについてはカートASPのところでも少し触れています。これはサーバーの代わりにクラウド上にプログラムを格納して利用するタイプのECプラットフォームです。クラウドの管理はベンダーが行うため、アップデートについてのメンテナンスについては利用者が手をつける必要がなく、ECパッケージの課題の一つであるメンテナンスに対する継続的な専門性の必要を大きく減らしてくれます。
また、通常のASPよりも柔軟にサイトを構築することが可能であり、ASPを利用した場合の柔軟性のなさを改善するという点にも挑んでいます。
EC全体で見てもECパッケージを利用しようという利用者も取り込むべく進化しているといえます。EC業界全体でみると非常に注目度の高い分野です。ただし、プラグインなどは基本的にベンダーが提供するものしか利用できません。つまり、実質的には強化されたカートASPという感覚です。
そのため、選択するジャンルとしてはカートASPの範疇で考えておいた方がまだよい段階かもしれません。ただし、今後はより自由度の高い構築が可能になってくる可能性もあります。
あらゆるものが桁違いなフルスクラッチ
フルスクラッチとは完全にオーダーメイドの構築方法です。最近ではECプラットフォームについてたくさんの構築方法が普及してきました。そのため、年々、このフルオーダーによる構築方法の出番は少なくなってきています。
それはそれだけEC構築のノウハウが普及してきたことでもあり、また、ECプラットフォームを持つことが一般化してきたこととも関係していると言えるでしょう。多くの場合、既存の構築方法の中に選択肢があるため、相対的に出番が減ってきているということがいえます。
フルスクラッチでのECプラットフォーム構築にはまず予算が他の方法よりも多く必要になってきます。そのため、初期費用の部分で選択肢から消えることが多くなります。また、構築に必要な期間も他の構築方法と比較すると格段に長くなります。ですので、もし、既存の方法で賄うことができるのであれば、そちらを選択したほうが断然に有利です。
一方で、予算と工期の問題をクリアし、なおかつ既存のスタイルではどうしても構築できないという場合はもはやフルスクラッチしか方法はありません。
また、メンテナンスの面でも十分に技術者を抱えることができる環境を持つ必要もあります。そのため、本格的にECに集中して利益を上げて行こうというケースでは最終的にフルスクラッチでのECプラットフォームを活用し、最新技術を開発して応用していくという流れになってきます。
実際のところフルスクラッチが最初の選択肢になる企業は少ないでしょう。しかし、条件がそろうと、これが最高の選択肢になります。
ECプラットフォーム選びは押し並べて、条件にあったものがそれぞれにとって最高の選択肢となります。そのため構築方法によって優劣を決めることは困難です。
ECプラットフォームの優劣よりも自分のニーズを考える
ECプラットフォームを選択するという場合、単純にスペックやイニシャルのコストで考えることはあまり意味がありません。今の現状にあったECプラットフォームを選んでいくことがとても重要です。
単純に初期の予算をかけたから売り上げが伸びるかは実際にはわかりません。事業の規模や生産数、在庫数などを考える必要があります。
例えば、1週間に一つしか商品を製造できない手工芸品に対してであればハイエンドのカートASPでは機能を持て余す可能性があります。また、構築に金額をかけないとしてモールで販売することも生産数を確保できないことを考えると向いていません。
逆に、製造力のある商品であれば、たくさんの顧客を抱えていくことになるので、それなりの顧客管理システムが必要になってきます。モールとの併用も考慮すべきですし、売るためのマーケティング機能との連携へのニーズも高くなるはずです。
このように自分たちのECプラットフォームに対するニーズは今、どの規模なのかを正確に計ることが選択時に欠かせない作業になります。ECプラットフォームのスペックと自分たちの現状を考えたニーズをイコールにすることがとても重要です。
どのようなECプラットフォームであっても時代の変化に合わせて少しづつ陳腐化していきます。そのため、永久に現状のまま使い続けるのではなく、事業の規模が拡大した改修をかけたり、時には変更する気構えも必要です。
tri-coを選ぶケース
わたしたちがリリースしているECプラットフォームtri-coは分類としてはECパッケージになります。tri-coではエンドユーザー、セラー、そしてそれを動かす運営者がみなハッピーになれるECプラットフォームとはどんなものか、ということを具現化していくことにチャレンジすべく開発しています。
スモールビジネスとして始めた、あるいは店舗の売り上げを補うためにWEBショップ運営を始めたというケースでは、最初のうちは簡易型のカートASPで十分な機能があります。それがだんだんビジネスの進行の中で足りないものが出てくることは少なくありません。
そうしたリニューアルに向けたケースにはtri-coも選択肢にぜひ入れてみてください。みなさんのビジネスの加速が、さまざまな人のハッピーにつながる、強いては世の中のハッピーにつながる、そんなサポートをtri-coを通して私たちは行っていきたいと考えています。
ABOUT US
この記事を書いた人
鈴木隆太 株式会社かいな
975年生まれ。会社員から2004年よりライターとして活動。雑誌を中心にネット移行への過渡期を経験。主に音楽、文化、医療、マーケティングなどについて執筆。ライター外ではマーケティング、コーチング等。